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 内澤旬子 世界屠畜紀行 レビュー

 

今回ご紹介するのは内澤旬子さんが書いた世界屠畜紀行です。

 

繊細でありながらもどこかコミカルなイラスト付きで学ぶ生き物を殺すということ

タイトルの通りこの本は日本、韓国、ヨーロッパ、中央アジアなど世界各国で生き物を殺し、そして肉を作る作業、つまり屠畜(屠殺が一般的かもしれませんが書籍内での呼び方を採用しています。)がいかにして行われているのか、時として辛い差別にもさらされる職人たちがどのような生き方をしているのか、そういった世界で日々行われている屠畜の現状をイラストと文章で紹介する内容となっています。

 

いろいろな文献を自家薬籠中の物としながらも、そこに落ち着くことはなく、小学生が読んでも比較的すっと理解できるような文体で、生き物を殺す文化に迫るさまはさすがです。著者である内澤さんは元々イラストレーターとしてフリーの活動を始めたということもあってか、独特の味があるイラストもたまりません。

 

写実的でありながらもどこか温かみがあり、臓物が飛び散ったり、首が切断されるさまが鮮明に描かれているにも関わらず、不思議と嫌な感じがしないのも内澤さんのすごさでしょう。

 

肉をさばく人間への差別についても余すところなく描く

この本の大きな命題はおそらく「なぜ肉という多くの人に食べられている食材を加工作っている、加工している人たちが差別を受けなければいけないのか」という内澤さんの疑問、怒りにあるでしょう。

 

ですから本書は鮮明に屠畜文化をつづるだけでなくというところだけでなく、日本やインド、韓国など差別があろう国でも、変な躊躇もためらいも気どりもなくずいずいと踏み込んでいくところにもあります。

きれいごと、あるいは紋切り型の差別、非差別論に落ちいることがなく、当事者の声を聴き、周囲の声や反応をつぶさに見、あくまでも事実として差別のあり方あるいはされていない状況を描いているのです。

 

狩猟にも注目が集まる今だからこそ読んだ方がいい作品

昨今では若い世代では、食べ物を作るという作業と実生活が切り離されていることに大きな違和感を抱いている人も増えてきたような気がします。

雑誌や漫画、ウェブのメディアでもかなり扱われていますよね。その一方で逆にだからこそ生き物の権利を大事にしなくてはと、肉食を叫ぶ人が増えていたり、するのも事実ではないでしょうか。

そうした中で淡々と、そして連綿と受け継がれてきた、でも我々が意図的に見ないようにしててきた生き物を屠り、そして肉にしていくという文化をあけすけ忌憚なく伝えるこの本は示唆を与えてくれるのではないかと私は思います。

文体も優しくかつ様々な文献を参照しながら進められていくので、まじめに屠

気になった方は是非読んでみてください。

では