笑いながら、生き物が死に絶えることについて考える わけあって絶滅しました。 レビュー
「わけあって絶滅しました。」は
ダイヤモンド社より発売された新感覚の動物図鑑だ。
全175ページのほとんどを占めるのは
「わけあって絶滅」したちょっぴり切ない動物たち。
書き手は本作以外にも「残念な生き物事典」シリーズ
など少し斜め上を行く視点で動物のことをつづった
書籍を手掛ける動物ライターの丸山貴史氏だ。
サトウマサノリ氏、ウエタケヨーコ氏、海道健太氏、なすみそいため氏
合計四人のイラストレーターたちが、ちょっぴり切ない動物たちの挿絵を手掛ける。
動物たちの特徴をとらえた写実的な絵だが、本書の持つどことない切なさ、
おもしろさを表現している。
本書は実際にわけあって絶滅してしまった彼らが、自らの栄華を振り返りながら、
自分たちが絶滅した理由を読み手(ホモサピエンス)に伝えていくという流れをとっていく。
内容にはここでは深く触れないが、非常に重く、特に昨今の人間にとってはなかなか耳が痛い絶滅というキーワード、そしてその自然の中での避けられない訪れを動物愛護宗教など特定の思想を挟まず科学的に淡々と伝える良書だ。
かかれている内容自体は事実をもとに理路整然としているが、間に挟まる絵や独特の言葉運びによって、悲惨な絶滅の真相が面白可笑しく語られていく。
いずれ我々も絶滅するわけだが、そのことを悲惨な気持ちやオカルトチックにではなく、しっかりと科学的に考えられるいい機会を提供してくれるだろう。
私の気になった生き物はステラ―カイギュウだ。
人間との接触によってわずか40年弱という短期間で絶滅してしまったという、
近代史の闇を感じられるせつない生き物だ。
悲しい習性と人間の業の深さはぜひ本書を見て確かめてほしい(もちろん筆致は軽く、スーッと読める内容になっている。)
本書は図鑑の形式をとっているため、どこから読んでも問題はない。加えて、読みやすく、1から2時間程度あればすべてを読み込めるほどの内容だ。
これからの時期、お子さんの自由研究、読書感想文の題材にもいいだろう。
面白おかしく、時にはくすっと笑いながら、「死に絶える」ということについて真摯に考えてみるのもいいかもしれない。