最近読んだ本 聖なるズー
2019年の開高健ノンフィクション賞受賞作。あらすじはざっくりいうと、動物性愛者要するに動物を性愛の対象とする人々、その中でもドイツにあるとある動物性愛者団体の人間たちと筆者がかかわっていき、彼らは一体何者なのかそしてそこから浮かび上がってくる、性とは愛とはという問題について向き合うといった流れの話。とても面白かった。
著者はもともと京都大学で文化人類学を学ぶ研究者で、この本の題材にもなった動物性愛について研究していたらしい。内容は学術書としても耐えうるような重厚なものなのだが、筆者はライターの経験もあるということで、するりと話が読めてくる。
個人的には動物性愛というと、俗にいう”獣姦”要するに動物をあくまでも性欲を発散するようなあり方をイメージしていたんだけれど、出てくるドイツの動物性愛者”ズー”たちは違って、あくまでも動物を愛を注ぐ対象としてみているところがちがう。
直接的には話の出来ない彼らとの関係を非常に丁寧に調節していて、自分が見てきた、感じてきた性愛に対する感覚がまた違ったほうに開ける感じがした。
著者がもともとDV被害者という背景もあるらしいけれども、昨今の被害者性に基づいて不気味なものを一方的に腐すようなところはなく、彼らとともに生活を一時でもともにし、そして彼らの心に寄り添い、話を紡いでいく姿にも感銘を受けた。
性の話題というととかく人は触れたがらない。日常的に考えているにもかかわらずだ。だが、そこにもっと本質的な当人の考え方がや社会との接し方そしてそこから見られる社会のありようがあるはずなのだ。
そんなことを感じさせてくれる一冊。
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