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遺品整理バイトの思い出1 揃うやつらは曲者ぞろい

私は過去に一度だけ、遺品整理のバイトをしたことがある。遺品整理というと何かわからない方もいるかもしれないので、簡単に説明する。

 

とても簡単に言えば、故人のおうちに残った物品を整理する仕事だ。もちろん、個人といってもいろいろあって、病院で亡くなったけれども身近に身寄りがいない人もいれば、言いづらいが孤独死したような人もいたりする。

 

もちろん死んでしまった後に残ったあれやこれやは非常に危険なので、専門の特殊清掃を行う業者がやるわけだが、ちょっと片付いたところ後であれば、遺品整理業社も清掃にあたったりするらしい。

 

ちなみに私が働いたバイト先は結構ブラックなところだったようで、全然きれいになる前の部屋でいろんなにおいがした。ここでは一日だけだがそんな少々グレーな遺品整理業でバイトした時の話をしたいと思う。(登場人物はすべて仮名だ)

 

紹介されたのは某日雇いのお仕事を紹介しているネットサービスだった。ちょっとお金に困っていた私は引っ越しや事務所移転の仕事よりは大変ではないだろうと、こちらの仕事に応募することに。

 

もちろん大体どんなものかは下調べをしていた。危なくはないはずだし、それほどしんどくもないはずだ、という目論見があったのである。とはいえ、肉体労働。あまり応募する人は多くないのか、人手が足りていないのか、返事はすぐに帰ってきた。登録説明会に参加してほしいとのことである。

 

指定された日時に新宿にある某雑居ビルに赴くと、その事務所はあった。非常に小さな場所で、説明会なんて大仰なものができるとはとても思えなかった。だが、場所はここらしい。

 

ついてしばらくしていると、中から髪の毛を結んだ、柔和そうな中年男性が出てきた。少々複雑である。優しそうではあるが、なんだか胡散臭い。

とはいえ、顔に出すわけにもいかず、私はそんな気持ちを隠しつつ、中に進んだ。どうやらまだ人は来ておらず、私が一人目らしかった。

 

指定された紙に身分証の番号やらなにやら記入しながら、私はロン毛のあやしいおっちゃんと少々雑談した。

「遺品整理で応募したんですけど、どんな仕事を他に斡旋してるんですか」

「うーんやっぱり主に肉体労働ですね。ただあまり体力がない方向けに実演販売なんかもご紹介したりしてますよ。何かご希望のお仕事でもあるんですか」

「いえ......」

なんて、とりとめもないことを話していると、他の説明会参加者が集まってきた。女性が2人、男性が私を入れて2人ちょうど半分半分だった。他の2人は会社勤めで副業で働きたいということらしい。

 

もう一人の男性、というか男の子はまだ高校に上がったばかりらしく、なんだかほほえましかった。こういうところでバイトするなんて頑張っているなぁと。ちなみにこの時私は大学生。計画的にお金を使えないから説明会に参加していた。実に対照的である。

 

この後はもろもろご紹介できそうな仕事を教えてもらったり、出退勤の連絡の仕方だとか、お給料の支払い方法だとかのありがちな説明を聞き、その日は終わった。帰るときに早速仕事の案内のメールが届いていた。

 

もちろん遺品整理業である。他におっちゃんが紹介していた仕事も気になるにはなったが、できるだけ早く仕事がしたかったので、すぐに返信することに。案の定、仕事はすぐに決まった。

すぐに私のメールアドレスに場所と持ち物などを示したメールが返ってきた。こんな風に書いてあったと思う。

明日の出勤場所は○○駅です。お仕事の時間は7;10~14;00.10分前集合でお願いします。持ち物はゴム付き軍手、チノパン、スニーカーです。最寄り駅から出発時にはご連絡ください。以下地図。一緒に働く人は吉兼さん、山岸さん、田中さんです。駅に着いたら今回の班長である吉兼さんに連絡してください。

 

遺品整理と聞いていたので、かなりすごい持ち物を連想していたのだが、別に大したことはなかった。倉庫での作業と同じくらいである。ラッキー、そんな風に思っていた。

 

次の日、とうとう出勤することに。場所は家からそれほど遠くないJR沿線のとある駅だった。5時くらいに起き、6時半くらいに家を後にした。現場に着いたのはちょうど集合時間の10分前くらいだったと思う。

到着したので吉兼さんに連絡をすることに。駅のすぐ近くでまっているというので、合流した。吉兼さんは20歳代くらいの太めの男性で、タイムマシーン3号の関太から陽の部分を全部取り除いたような見た目をしていた。

 

しばらくすると、山岸さんも集合場所に駆けつけてきた。山岸さんは中年の屈強な体つきをした男性で、武井壮の目を大きくし、体から少し張りを取ったような見た目をしていた。ちょっと怖い。二人くらい揃ったので軽く挨拶を交わす。

 

話を聞けば二人は私が遺品整理業を紹介してもらった派遣会社の先輩で、遺品整理業にも比較的長く携わっているようだ。頼もしい限りである。

 

そんな中しばらくすると、田中さんがやってきた。50歳代くらいの亀井静香を静かにして威厳という威厳を取り去ったような感じの男性だ。見た目は気のよさそうなおっちゃんなのだが言動が妙にたどたどしく、危なっかしい。一抹の不安が頭をよぎった。この不安はのちに的中することになる。

 

全員揃ったので早速、現場に向かうことに。吉兼さんが、重々しく口を開き、山岸さんに話しかけた。

吉兼「今日さ、高橋さんの現場らしいんだよね」

山岸「えっまじ!」

私「なにがやばいんですか」

山岸「うーん普段はもう少しおとなしいというかあんまり言わない人が現場を担当してるんだけど、高橋さんはちょっと厳しくてねぇ。いろいろ言われちゃうかもしれないから私君も十分気を付けてね」

私「あ...はぁ」

 

一抹の不安がよぎった。「この仕事やべぇかもしれない」。ちなみに田中のおっちゃんはと言えば、どこ吹く風。皆をしり目に少し離れた売店午後の紅茶を買っていた。この田中のおっちゃんがのちにひと騒動起こすわけだが、それはまだ知る由もない。

 

しばしとぼとぼ歩いていると、現場のマンションが見えてきた。前にはトラックが止まっている。私たちは今からあそこのアルバイトスタッフとして労働を始めなくてはならないらしいことがわかった。