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売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ レビュー 渡鹿野島の現状がわかる一作

最近読んだ本の感想おば

 

売春島とも呼ばれ、かつては性風俗産業で栄えた三重県渡鹿野島(わたかのじま)が舞台。

性風俗などの分野でルポライター、ノンフィクション作家として活動をしている、高木瑞穂さんが、その実態に迫った一作だ。

性風俗を主な生業に栄えた70年代から、衰退してしまった現代まで、インタビューや謄本をもとにしたち密な調査によって明らかにしていく。

性風俗産業がらみというと、何やら裏社会ものというか、下卑た興味関心のもと書かれているものも多かったり、あるいは様々な当事者のインタビュー録みたいになっていて、そこから先に踏み込まないものも多い。

もちろんそちらはそちらで面白いのだけど、雑誌ではなく本の形だと何だかなぁと思ったりものするものだが、こちらは、そうではない。

性風俗に支えられた渡鹿野島の一代記のような内容になっている。もちろん、仕事が仕事出てくるのはやくざや一癖も二癖もあるやり手のママ、あるいは取り調べ途中にできてしまってママに協力するようになった警察官など、要するに一般社会では見られない人も多く登場する。

だが、単にそれらを面白可笑しく記述するのではなく、丹念に背景を調べ、そういった人々が渡鹿野島の中でどのようにつながっていたのか、そして渡鹿野島性風俗を主な産業として、いかようにして隆盛を極めたのか、何故現在はある種そのほかの離島や限界集落と同じように、衰退の一途をたどるようになってしまったのかを克明に記している。

ただ、もちろん研究書や「ジャーナリスト」と呼ばれる人たちが書くようななんというか、かしこまった難しいだけの内容ではなく(もちろんそういう本も面白いですよね)しっかりと、読者を楽しませるような謎も残している。

それが、渡鹿野島をある種、治めていたともいえる旅館つたやの経営者を篭絡させた、詐欺師の存在だ。

もちろん、詐欺師の存在は渡鹿野島、ひいてはその中心にあったつたや衰退の要因の一つでしかないことはしっかり明記されているわけだが、その他のメインとなる登場人物たちについてはその背景についても克明に描写されるのだが、ついぞこの謎の詐欺師の実態は本書の中では明らかにされていない。

渡鹿野島の歴史的なロマンに思いをはせることができる一方で、しっかりと裏社会に潜むヤミのようなものも垣間見える内容になっている。

すんげぇ面白いので、ぜひ