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最近kindleで読んでみてよかった書籍1「あなたの人生の物語」テッドチャン

最近kindleを利用して購入、実際に読んでみたものの紹介をしたいと思う。

なんかシリーズ化するとブログを続ける原動力になりそうなので、初めて書く今回は第一回としてみた。

そんなわけで記念すべき第一回は20世紀、あるいは21世紀のSF史に燦然と輝く名作「あなたの人生の物語」について書いていきたい。

2017年に公開された映画「メッセージ」の原作として、世界中の人々に、そして、でかいばかうけとして一部の日本国民に大うけした本作だが、原作はテッドチャン氏によるショートショート作品集だ。

表題作「あなたの人生の物語」を含む、全8篇によって構成されている。断言しようどれも素晴らしい作品だ。

アーサーCクラークの「幼年期の終わりに」のような人類の創造想像を絶するような情景を描いた作品。

フィリップKディックのようなSFサスペンス、そんな動きのある作品は少ない。

一読するとこれは果たしてSFなのか?と思ってしまう。だが、言語学から脳神経科学など縦横無尽に行きかうテッドチャン氏、やっぱりじっくり読んでみると根底には科学的な命題が浮かび上がってくる。

これは私自身の感想だが、テッドチャン氏の作品は日常のちょっとした人間の変化や世界の理屈に対する気づきという些細な点をSFという観点で見事に表現していると思う。

特に表題作である「あなたの人生のものがたり」は出色の出来だ。

映画ではやはり映像で見せる必要があったためか、肝心な言語の習得によって主人公の思考様式が変わっていく様子の壮大さが省かれている。(その分映画として面白くはなっていて、こういう原作物の作品としては単なるエンターテインメントに落とさずよくできていると思う。)

原作では、壮大なサピアウォーフの仮設*1。という話も上がっているが、個人的には一人の人間が結婚、そして出産であったりを通して変化していく様、その自分でもあらがいようがない、その動きの大きさをSFという題材で描いているのではないかと感じた。

またもう一つエンターテインメント性は高くないが、うならされたのが、冒頭に収録されている作品、バビロンの塔だ。

実際にバビロンの塔が存在していたら、人々はそこで何を感じ、そしてどのように暮らすのか、確かな知見に基づき論理的に書かれていく。

一方で絵本のようなファンタジーな展開が矛盾することなく、描かれている。テッドチャン氏のすごさが堪能できる作品だろう。

 正直なところ専門知識がないと頭に疑問符が浮かんでしまう作品も多く、難解なのもテッドチャン氏の作品の特徴だ。(特に本作収録の「理解」などがそれにあたるだろう)

だが、じっくり取り組んでいくとなにがしかの気づきが得られる、単にエンターテインメントに終わらない作品であると言える。

気になったら読んでみてほしい。

ちなみに近所にブックオフがあるという方は、そちらで探したほうがお安いでしょう。

では てへぺろ

*1:サピアとウォーフという言語学者が提唱した仮設でざっくり行ってしまうと、言語によって文化や思考様式が決定されるというもの、古典的な考え方であり、批判も多いがいまだに議論されている