読書 高野秀行 辺境メシ
世界にはいろいろな飯がある。とはいえ、それがどんなものでどんな味でどんな人に食べられているのか、なかなか具体的に知ることは難しい。
そんな世界中の謎の飯を臨場感たっぷりに教えてくれる本があったらどうか。それが高野秀行氏の「辺境メシ」である。
辺境冒険家などと自称することもあるノンフィクション作家の高野秀行氏。コンゴのUMAモケーレ・ムベンベを追った冒険の一部始終を綴ったデビュー作「幻獣ムベンベ」をはじめ、アフリカ、中南米、中央アジア果ては紛争が終わってからいくばくも時間のたっていない、ソマリア、東南アジア麻薬のトライアングルなど様々な辺境に訪れそこでの風景を読者に伝えてくれた。
そんな高野秀行氏が訪れた場所で食べた飯、そもそも食べれるのかも疑わしい奇妙な飯めったなことでは味わえない辺境メシをまとめて紹介したのが本作。
冒頭、コンゴで食べたゴリラのエピソードを初め、入っているのは奇妙奇天烈な飯の数々。そして果てしないのだが、どこか緊張感のない独特の高野節でつづられるエピソード。
個人的にはやはり冒頭のエピソードが出色の出来だと感じた。偉そうな動物学者が登場、猿を食う部族と帯同し彼らを「ゴリラは大事!」「食うな!」としかるのだが……。
元々は週刊文春誌上で連載されていたとのことで、平気で色々なものをむしゃむしゃと喰らう高野氏にたじろぐ、文芸春秋社の編集者の声が入っているの結構楽しい。
相変わらず、こってりとしたボリュームだが、最後までするすると読めてしまう。楽しい一冊。
おすすめ。