アスファルトに恨みでもあるのだろうか
道を歩いていると遠くから子供の叫び声が聞こえてきた。「ッシャー!!」とか「ウォー!」とか言っている。ちょっぴり身の危険を感じるが、何に対して奇声を上げているのか気になる。
近づいてみると、少年が二人アスファルトの路面の真ん中に陣取り、何事かに興じていた。一人はしゃがみこみ、アスファルトの上を見つめている。もう一人は何かを右手に持ち、振りかぶっていた。
振りかぶっていた少年は差ながらアスファルトに恨みでもあるかのように、その手を振り下ろし、奇声をあげながら何かを地面にたたきつけた。「アアアァー!」「ピシン!」奇声とともに勢いよくたたきつけられたそれは、アスファルトに着地すると、乾いた音を響かせた。
それが勢いよくたたきつけられた瞬間しゃがんでいた少年は「ピシン!」という乾いた音とともに、ペナルティーキックを外したサッカー選手のように両手を顔にやり「んんんんんー!」と悔しげな声をあげながら、アスファルトの路面に転がり込んだ。
その一方で何かを思いっきりたたきつけた方の少年は何やら満足げだ。寒空の下広がるアスファルトを舞台に死闘が繰り広げられている。「やだ、怖い」そんな風に思ってしまった。
だが、私は、彼らがアスファルトに何かをたたきつけているその先にある、セブンイレブンに用がある。悲しいことにセブンイレブンに行くために迂回する道はない。通らなければいけない。この修羅場の横を。
そんなこんなで彼らを見てみると、今度は攻守が逆転した。先ほど、何かがたたきつけられる瞬間を見ていた方が今度は恨めし気な顔で何かをたたきつけようとしている。
私はまだ、いまいち状況がつかめなかった。どうやらこいつもアスファルトに恨みがあるらしい。困った。支離滅裂だ。一体何なんだろう、この風景は。
なんて思っていたが、近づいてみるとホッと胸をなでおろすことができた。少年たちは寒空の下メンコに興じていたのである。素敵だ。ゲームしないでメンコしてる。
なにやら悟空やらブロリーやら描かれている。古いものではないらしい。彼らの後ろを通り過ぎると、また「うわー!!」とか「ギャー!」とか聞こえてきた。彼らは楽しんでメンコをしているようだ。
なんだかいいお酒で酔っぱらったような気持ちになりながら、私はセブンイレブンに向けて歩みを進めたのだった。
終わり